特許料等の軽減措置について

 暦の上では春とはいえ、まだまだ寒い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。そろそろ年度末に向けて慌ただしくなってきた方も多いかと思います。法律の改正や国の政策(助成金や支援制度)も、年度末を機に変わることが多いため、弊所でも、新しい情報に耳と目を光らせております。弁理士同士の横の繋がりも含めて情報収集に努めておりますが、法律であれば国会の承認次第ですし、政府の施策も予算の確定次第と、不確定な情報が多く、なかなか皆様にお伝えすることができない状況が続いております。今回は、その中でも中小ベンチャー企業等を対象とした特許料等の軽減措置について、特許庁より発表(プレスリリースは こちら )がありましたので、ご紹介いたします。

現在の特許料等の軽減措置について

 現在(平成30年2月現在)、中小ベンチャー企業、小規模企業(個人)等を対象とした、特許料等の軽減措置が実施されています。これは、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの期間限定で、中小企業等一定の要件を満たす企業及び個人に対して、審査請求料、1~10年分の特許料、国際出願に関する費用について、2/3を軽減するものです。中小企業等に対して、審査請求料等を軽減する措置はこれまでも行われておりましたが、対象となる条件が「1)小規模(従業員数20人以下等)の個人事業主又は法人」、「2)事業開始後10年未満の個人事業主」、「3)設立後10年未満かつ資本金3億円以下の法人」のいずれかを満たせば良いため、ハードルが低く、非常に利用しやすい制度となっておりました。加えて、軽減額も2/3と大きかったため、弊所でも広く利用を進めさせていただいてきました。

 この制度は、開始当初から、平成30年3月31日までの期間限定であることは決まっておりました。しかしながら、従前から軽減制度については毎年のように実施されており、延長又は名前を変えて同種の軽減制度が実施されるのではと考えていたのですが・・・今回、上記特許庁の発表を見る限り、次年度以降に、本制度のような手厚い支援制度はなくなりそうな雰囲気です。このため、出願審査請求等の手続を近々ご検討であれば、平成30年3月31日までに手続を行うことで、出願審査請求料等を抑えられる企業が多いかと思います。

平成30年4月1日以降の軽減措置

 さて、現在の軽減措置が終了すると、中小企業等に対する支援制度が一切なくなるかというと、そうではありません。上記軽減措置が終わっても、従来から行われている軽減措置がありますので、そちらを利用することができる場合があります。ただし、こちらの軽減措置は、平成30年3月31日に終了する軽減措置と比較すると、軽減を受けるための条件が厳しく、また、軽減額も小さくなります。

 具体的には、軽減対象が「1)研究開発型中小企業」又は「2)非課税等の個人・法人」に限定されます。1)の研究開発型中小企業とは、試験研究費及び開発費が一定以上の割合である中小企業、又は、特定の認定事業を実施する事業を行っている中小企業のことで、研究開発を積極的に行っている企業であれば、該当する可能性があります。
 一方、2)の非課税等の個人・法人とは、市町村税・所得税・事業税等が非課税の個人、法人税が非課税の法人、又は、開業後10年未満の個人・設立10年未満の法人、であれば、該当する可能性があります。
 詳細については、特許庁のサイト(こちら)をご確認頂きたいと思いますが、「開業後10年未満の個人・設立10年未満の法人」以外は、予めこれらの要件を踏まえて事業を計画しないと、軽減対象となることは難しい条件であるため、今年度までと比較すると来年度以降は、軽減措置を受けることは難しくなりそうです。

知的財産関連の助成金について

 今回は、特許庁の軽減制度についてご紹介させて頂きましたが、都道府県や市町村等の自治体でも、特許出願や審査請求費用等の助成金制度を設けている自治体は少なくありません。例えば、弊所のある小牧市やお隣の春日井市では、国内特許出願及び出願審査請求費用について、弁理士費用も含めた助成金制度があります。そして、多くの場合、特許庁の軽減制度と自治体の助成金制度は重複可能ですので、特許出願等をご検討の際には、特許庁だけで無く、地元の自治体の助成金制度についても、確認してみると良いかもしれません。なお、弊所では、助成金申請に必要な必要書類等についても、お手伝いさせて頂いておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。

 最後に、現時点(平成30年2月21日)での情報ですので、今後、新たな施策等により状況が変わったり、適用条件が変わったりする可能性があります。このため、軽減措置を受けられるか否かについては、お近くの専門家(弁理士)又は特許庁に必ず最新情報を御確認下さい。